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イヌ 11歳6ヵ月 オス(未去勢) フレンチブルドッグ
【 ここ1ヵ月で急激に老化した 】というワンちゃんです。
■ お話をお伺いすると、
・お腹が痛い時に見られる祈り姿勢(前肢を地面につけ、お尻をあげる姿勢です)をする。
・すぐ疲れてしまう。
・食欲も元気もかなり落ちた。
・足腰が弱くなった。
とのことで、色々な症状が出てしまっている状態でした。
■ 飼主様とお話をしている間にも、ワンちゃんは何度も祈り姿勢を行っていて、活力が無いのが見てすぐわかりました。
■ 問診の後にワンちゃんの触診を行っていくと、右大腿部に腫瘤物がありました。
■ そこで、腫瘤部の細胞を調べる細胞診検査を行わせて頂いたところ、【 肥満細胞腫 】との診断が出ました。
■ 肥満細胞腫の治療の第一選択は外科的切除です。
しかし、この子の場合、高齢かつ軟口蓋過長症があり、ワンちゃんに麻酔の負担をかける以外の方法で治療をしていきたいとのことでしたので、内科療法および化学療法を行うことになりました。
■ 肥満細胞は太っているワンちゃんにあるわけではなく、身体のさまざまな組織で免疫反応に関わっています。
■ 肥満細胞腫とは、炎症を引き起こす物質(ヒスタミン)を含んでいる肥満細胞が腫瘍化することです。 なので、腫瘤部に刺激を加えると、肥満細胞からヒスタミンが放出される結果、腫瘤部の周囲が赤く腫れたり、胃潰瘍を起こして吐き気がでることがあります。
■ ワンちゃんでは祈り姿勢をする際にまず考えるのが、急性膵炎による腹痛ですが、今回の祈り姿勢では肥満細胞からヒスタミンが放出され、胃潰瘍や消化管粘膜を傷つけていたために痛みがあり、食事も少しずつしか食べれず、元気も落ちてしまっていたと考えられました。
■ なので、胃に対するケアとして、胃薬をしっかりと使ったところ、ワンちゃんの食欲も元気も以前のように戻り、腹痛を示すような祈り姿勢もしなくなりました。
■ そして、肥満細胞腫の治療は、外科切除ですが、飼主様とご相談の上、外科切除はせず、化学療法を行っています。
腫瘤の大きさが小さくなりその後サイズ変化がないので、今は化学療法を一旦ストップし、経過を見ていますが、腫瘤の大きさに変化はありません。
■ ですが、外科切除を行わない限り、腫瘤が小さくなっても細胞レベルでの腫瘍細胞は消すことはできないので、どこかでまた大きくなる可能性は十分にあります。
そのため、今は定期検診にて身体全身の触診および超音波検査を実施しています。
■ 肥満細胞腫の本来の治療とは少し違いますが、病気の動物さんと常に接する飼主様が、『これなら治療を頑張ってみよう』と考えられる方法を一緒に考えて治療に取り組んだ症例でした。
■ 「いつもとなんとなく違う気がする」そう思った際は動物病院を受診されることをオススメします(^^)/
獣医師 新美綾乃